僕は杏仁豆腐が大好きです!だからケーキ屋だけど作っちゃいました。
杏仁豆腐は言わずと知れた中国のデザートなのですが、
中国では点心というジャンルに入ります。
点心は甘い「甜点心(テェンテンシン)」と
塩味の「鹵点心(シェテンシン)」に分かれ、
杏仁豆腐は甜点心になります。
「杏」はアンズ、「仁」は種の中身の白いところ、
「豆腐」は豆腐状の例えに使われます。
元々はアンズの種の中身をすりつぶし、
水で煮出して漉したものを寒天で固めたもので、
薬膳として風邪薬に使われたのが始まりです。
それが時を経て練乳等が加えられ、スイーツとして食べられるようになりました。
それはさておき、
僕の調理師学校時代からの親友で、
小田原で「静蓮(セイレン)」という中国料理屋を営んでいる平野鉄也という人物がいました。
こだわりの料理人で、鮮魚や野菜など地元の食材を愛し、
和食顔負けに素材の味を生かした中国料理は、
遠方からわざわざ食べに来るお客様も多い名店です。
そして彼の作る杏仁豆腐は僕が今まで食べた中では絶品中の絶品!
とにかく美味しいんです!
彼は東京赤坂の四川飯店で長年にわたり修業し、
同店の杏仁豆腐を彼なりに改良したものを提供していました。
「この素晴らしい杏仁豆腐を洋菓子にアレンジできないものか?」
図々しくもそう思い僕は平野にレシピの伝授を頼みましたところ、
なんと彼は快く引き受けてくれました。
そして彼のレシピの水分の大半を牛乳に替え、
生クリームを使い、洋菓子らしくアーモンドの香りをつけました
(杏仁とアーモンドは香りがとても似ているのです)
そして何より、あの独特の舌の力ではかなく崩れるような食感だけは杏仁豆腐の命なので、
そのまま忠実に真似しました。
こうして夢天菓というケーキ屋に杏仁豆腐は並ぶことになりました。
もちろん平野も太鼓判を押してくれました。
今ではケーキを差し置いて主力商品となり、
夏には「ケーキも置いてる杏仁豆腐屋」と冗談を言われることも・・・。
これも親友平野のお陰です、
本当に感謝しています。
その平野が2015年7月に他界しました。
彼への感謝と料理人としての敬意を込め、
「静蓮杏仁豆腐」と改名致しました。
この杏仁豆腐なくして夢天菓は語れません。
ケーキが作れなくなっても、
これだけは作り続けたい逸品です。
是非一度召し上がってください。